改憲派の「便乗」改憲論には乗らない

現行憲法は人類の理想、変えなくても自衛できる

田中優子(九条の会世話人・法政大学名誉教授)

 いま、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、改憲をすすめたい勢力からは、「9条無力論」や「憲法に自衛隊を明記すべきだ」などの9条改憲論が声高に叫ばれています。しかしこれは便乗です。新型コロナウイルス禍を理由に憲法に緊急事態条項をつくろうとの声があがっているように、改憲派はいつも機会を狙っている。

 便乗というだけではなく、九条を変えて「力の論理」にひた走ろうとすれば、(ロシアの)プーチン大統領と同じ思考になってしまうのではないでしょうか。

 改憲派は、国民を守るため、憲法に自衛隊を明記すべきだと主張していますが、私は、九条はあのまま堅持していいと思います。自衛隊法もあります。憲法で全部判断しているわけではありません。現行憲法は特に九条と前文で、日本のみならず世界がどの方向に向かうべきかという人類の理想が入っています。その理想は捨てるべきではありません。

 九条の下で、侵略されたらどうするのか、日本が反撃できないまま攻められるのではないかとの懸念や心配の声がありますが、九条は自衛権を否定していないし、変えなくても自衛できます。万が一、ロシアが日本に攻めてきた場合、自衛隊は自衛する。その時に(九条の理念を逸脱して)ロシアに攻めていく必要はない。ウクライナ軍もロシアに攻め入っていない。改憲派はまるで何もできないかのように言いますが、成り立たない議論を改憲の道具に使っているのです。  九条を堅持するためには、いろいろなことに便乗し、そのたびに起こる改憲論に対して、「私たちは乗らない」と多くの人が言っていく必要があります。